
【第35回北海道新聞短歌賞を受賞しました!】
戦後七十余年を経て、いまだに鮮明な記憶として立ち上って来る、拓北農兵という稀有な体験をまとめた佐藤水人里さんの歌文集『凍てつく銀河―拓北農兵隊の子として』。
戦争の最末期に「拓北農兵隊」が募集され、戦災で生活を失った人々を帰農させようと、北海道の未開拓地に農兵列車で送り込まれた人々があったことをこの歌集によって知った。当時の記憶を文章まじえて綴ったこの歌集は、七〇余年前に悲惨な運命を歩まされた少女時代の貴重な記憶であり、涙ぐましく優しい抒情の声である。(馬場あき子「帯」より)
●歌集より5首
臨月の母がつぶやく「コンナ センソウ」幼くて知る秘密のことは
火の絶えし部屋はさまざま凍る音醬油の瓶の今割れる音
立ち止まれば我は氷柱になるならんひたすら月下の雪道歩む
晴れた日はユリ根探して雪原を父さまよえりスコップ担ぎ
もう何も食べない母にホッとしぬ時折かくれて烈しく泣きぬ
四六判上製カバー装・136頁
帯:馬場あき子
解説:川野里子
装画:田中薫子
装幀:南 一夫
◎2020年5月2日の東京新聞に紹介され、大きな反響をいただき、第二刷が出来上がりました!この機会にぜひお読みください。