
現在「歩道」編集長、斎藤茂吉記念館館長を務める秋葉四郎氏の、雄大さと優しさを兼ね備えた詠風で新たな歌境を拓いた第九歌集を文庫版化。
斎藤茂吉記念館の役員となって何時となく私の第二の郷里は、茂吉の生地上山になった。
行けば墓参もするし、友人となった運転手を指名して四季折々の蔵王をタクシーで往反する。
馴染の居酒屋にも必ず寄る。飲み仲間に付き合わせ、故郷に納税をしたつもりで、
機嫌よく新幹線の最終便の客となるのである。(著者)
―帯文より―
『蔵王』5首
・選歌しつつ出づる涙の真実を若人(わかひと)汝(なれ)の知る由もなし
・ブリガツハブレーゲ二つ山川の相合ひここよりドナウとぞなる
・募りくる吹雪のなかに辛うじて見ゆる樹氷はしろき幻
・蔵王より東(ひがし)佐太郎西(にし)茂吉それぞれ生地に下るこの道
・首相にて出産したる数奇なる運命はつひにテロにて終る パキスタン元首相ブット氏
<いりの舎文庫3>
文庫判カバー装・168ページ