
【重版出来!】
歩道叢書
東日本大震災後、数年に及ぶ仮設住宅の生活に耐え、
2019年2月に99歳を迎えた著者の第三歌集。
生涯に三度の巨大津波を経験している著者は、家屋等一切を津波にのまれながらも、九十一歳の叡智によって命をまもり、六年余仮設住宅の不自由にも耐え、元気に新居に落ちつき、九十八歳の日々を迎えている。その間の、そのすべてを失った悲哀、苦渋、姉妹甥との別れ、涙、周囲へのいたわり、肉親の絆、支援への感謝等々、短歌に詠い、エッセイに残した貴重な記録。よくも詠い、書き残してくれたという感謝と同門の誇るべき九十八歳の快挙として世に送り、清鑑を希う次第である。―――秋葉四郎「帯」より
●歌集より5首
巨大津波火事と津波に怯えつつ寒き一夜の明くるをただ待つ
わが思考持たざるままに導かれヘリに乗らんと運ばれてゆく
ことごとく瓦礫となりしわが浜に雪降りしきる視界のなきまで
窓破れ屋上に物の上るたるわが家の無惨こゑあげて泣く
根をさらし津波に耐えし椨(たぶ)の木の下にて君といのちを語る
四六判上製カバー装・284頁
帯文:秋葉四郎
装幀:南 一夫